【オススメ本】「起業家社会」における処世術 ― 英語で読み解く ドラッカー『イノベーションと起業家精神』(藤田勝利著)
かの有名なドラッカーが1985年に出版した「イノベーションと起業家精神」ですが、
本書はドラッカースクールを出られた藤田さんがご自身の経験やビジュアルイメージを
絡めながら非常に分かりやすくまとめてくれています。
そしてこの本を読んでみて、これからの時代になくてはならない要素が
「イノベーションを起こす力」と「起業家精神」なのだと、改めて痛感しました。
藤田さんは、イノベーションと起業家精神が必要な背景を、ドラッカーの言葉を
使いながら以下のように説明しています。(一部、平野解釈あり)
現代社会は「被雇用社会(組織に一生勤めることが圧倒的に主流の社会)」から
「起業家社会(自ら事業を、イノベーションを起こすことが主流の社会)」に確実に
変化してきています。
起業家社会は、人間の創造性が発揮される新しい社会で、一部の大組織や絶対的指導者が
経済を動かすのではなく、大衆の多くが創造性と主体性を発揮し、個々人も組織も豊かに
成長していくイメージです。そんな社会を作るためには、個々人において「イノベーション
と起業家精神」が必要だ、ということをドラッカーは言っています。
では、どうしたらイノベーションを起こし、起業家精神を持てるようになるのでしょうか?
私が本書の中で印象に残った点を、『起業家社会における3つの処世術』としてまとめて
みました。
(1) イノベーションの種を見つける(Seven Sources)
ドラッカーはイノベーションの機会として活かせる7つの種があると言っています。
具体的には、①予期しなかった結果(成功あるいは失敗)、②不一致/ギャップ、
③業務やサービスのプロセス、④業界構造や事業構造の変化、⑤人口動態、
⑥人々の認識の変化、⑦新しく生まれてくる知識、の7つです。
7つの種は、いずれも「変化(change)」あるいは「ギャップ(incongruity)」に
着目しており、そこから機会につなげるには以下のような問いを立てることが重要です。
・自分たちにはどのような変化が必要なのか?
・本当にこのやり方が最良か?/本当にそこが問題なのか?
・事実認識の誤りやギャップはないか?
なお、変化やギャップを見出そうと思ったら、まず以下を意識すべきです。
・「業界内で当たり前」と思われている要素を一つひとつ注意深く見て、
・全体を眺める(業界全体、プロセス全体、必要な知識全体など)
当たり前を疑うことは、慣れた考え方をいったん壊す必要があるため難しいのですが、
ギャップ(incongruity)はその業界を熟知し、日々観察できる立場にいる人だからこそ
発見できるものでもあります。
すなわち、イノベーションは日々一生懸命仕事をしている人達こそ起こせるのです。
(2) あれこれと複雑にしない(Simple and Focused)
ドラッカーは、「イノベーションで成果をあげるには、シンプルで焦点を絞ったもの
にすること。一つのことだけに集中する。さもなければ、混乱してしまう。」と言い、
多くの人が複雑で、散漫で、凝りすぎた考え方をしてしまうことはやってはならない、
と強調しています。
特に以下の言葉は、自分の感覚と大きくズレていて、ハッとさせられました。
「実際、イノベーションに対する最高の賛辞は、「こんなことは明らかだったはず。
なぜ、自分が思いつかなかったのだろう?」と言ってもらえることだ。」
Simple and Focusedを徹底することで、価値ある発見ができるということですね。
「複雑に考えれば、他の人は思いつかない・真似できないだろう。」という奢りや
「もっとこういう機能が会った方がお客様は喜ぶだろう」などと散漫な思いがあると、
本来着目すべきところに目が行かなくなっちゃうのだな、、と反省です。
(3) 一番になれるところを探す(Strategic position)
「イノベーションで成功するには、市場で「リーダー的地位」を狙うことだ」と
ドラッカーは言います。起業家的なマネジメントにおいては、問題に意識を奪われるよりも、
「機会」に徹底して意識の焦点を合わせることが必要です。そして、自身の強みに立脚し、
一番になれるポジションを取ることこそ「起業家的戦略」だと言います。
一番になれるポジションを取るには、「大きさ」よりも「占拠率」を重視し、適度に
小さいマーケットを狙うのが有効です。
既存のプロフェッショナルの仕事内容は2030年には大きく形を変えると言われており、
個人にとっては未来に向けていったん持っているものを棄て、新しい姿に生まれ変わるべく
知識やスキルを進化させるチャレンジ(「継続学習」「再学習」)が重要になります。
日本の教育においても、2015年に経済産業省にて「初等中等教育段階における起業家教育
の普及に関する検討会」が開かれ、『起業家教育のススメ』というレポートが出されている
ように、大衆にとっての教育要素として不可欠なものになってきていると感じます。
ぜひ皆さんも起業家精神を養うべく、イノベーションの起こし方やマネジメントの仕方を
学んでみてはいかがでしょう?
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