【オススメ本】「変わった親」になる勇気、ありますか?―未来のイノベーターはどう育つのか(トニー・ワグナー著)
1月、2月は受験シーズンですね。
私は少年サッカーチームを運営しておりますが、休部して受験勉強していた
6年生が戻ってくる時期なので、「受験上手くいったかな・・」とソワソワ
してしまいます(我が子ともなれば、その緊張や不安は倍増でしょう)。
と同時に、それよりも強く持つのは「この受験システムのあり方で本当に
良いのだろうか?」という問題意識です。
先行き不透明な世の中になり、現状の延長線では成功は難しい状況の中、
それを打破するにはイノベーションが必要です。ですが、果たして今の受験
システム(学校教育)を通じてどれぐらいイノベーターが育つのでしょうか?
抜本的に教育のあり方を変えなければならない段階に差し掛かっているのでは
ないでしょうか。
とはいえ、『イノベーターを育てる方法』が良く分からなければ、今の教育が
良いのかどうかも判断ができません。本書は、ハーバード大学でイノベーション
教育を行っているトニー・ワグナー氏が、『イノベーターの育て方』を明確に
打ち出してくれています。
【イノベーターを育てる上で必要な3つの要素】
本書はまず、イノベーションを起こすために必要な要素を①専門性(知識)、
②クリエーティブな思考力、③モチベーション、の3つと定義しています。
さらに、3つの要素の中で最も重要なのが『モチベーション』であると言います。
そして、(内的)モチベーションには『遊び』、『情熱』、『目的意識』という
3つの要素があり、親は子どもにどう働きかければ良いかを教えてくれています。
(1) 遊び
子どもは誰でも遊び、イノベーションを起こす内的欲求を持って生まれます。
ほとんどの親は子どもに遊ぶよう促しますが、イノベーターに育てるなら
『遊びを仕向ける方法』と『何で遊ばせるか』が重要です。
『遊びを仕向ける方法』についてのポイント
・ルールは「安全確保」と「自分の価値判断を押し付けない」とする
・子どもの意見を尊重して耳を傾けつつ、限界・境界線・秩序は守らせる
・さりげなく背中を押す(手を貸すタイミングを見極める)
・子どもを観察し、(何に関心を示しているかの)本質を見抜く
『何で遊ばせるか』についてのポイント
・おもちゃは少なく、シンプルなものの方が、創造性と想像力を助ける。
・スクリーンタイムを制限する
・読書(読み聞かせ)は、集中力と自発的な学習習慣を育む
(2) 情熱
子どもが自分で情熱を傾けられることを見つけ、追いかけるのを応援する
ことが、親の大事な仕事のひとつです。とはいえ、子どもの「好きなこと探し」
を手伝うために何をすべきで何をすべきでないかは悩むところです。
情熱というのは、試行錯誤の過程で醸成されるものです。親が期待を押し付け
るのではなく、また子どもに嘘の賛辞を与えることもない形で応援できるかが
イノベーターに育てられるかの分かれ目となります。
(3) 目的意識
目的意識は、遊びが情熱へと進化し、時間が経つにつれて発展して出来
上がるものです。なぜ情熱の上に目的意識があるかというと、実は情熱だけ
ではイノベーションは起こせないからです。人間は成長してくると、『なぜ
自分はこんなことにたくさん時間を費やしているんだろう』と不安に感じ、
挫けてしまうものです。それを乗り越えるには、自分にとって大事なことを
気にかけ、夢中になることが必要です。
目的意識は子ども達が自分で見つけなくてはいけません。そのために、
親は本人の想いがゆるぎないものになっているかをコーチングしてあげる
ことが大事です。
【問うべきは、「変わった親」になる勇気があるかどうか】
イノベーター教育は、これまでの教育とは違う以下のような価値観で
捉えられます。
・個人の習熟度よりも「コラボレーション」
・専門知識よりも「分野横断的な学習」
・リスク回避よりも「試行錯誤」
・消費よりも「創造」
・外的インセンティブよりも「内的モチベーション」
このように大きく価値観を変えるというのは、周囲の親と違う子育てをする
ことになるため、「世の中の流れに逆らっている」という苦悩に直面します。
イノベーターを育てる親になるというのは自信と勇気がいるのです。
子育てで究極的に必要なのは信じることです。まず親としての自分の直感、
判断、価値観を信じること。また子どもを信じること。子どもはユニークな
感性と才能があり、学びたい、作りたい、といった欲求があり、内的なエネ
ルギーがあると信じること。
そして、自分の親としての権威を見直すことも重要です。現在は「お父さん
が一番よく知っている」時代ではありません。また、地位や肩書で権威づける
こともイノベーションを成功させることにはなりません。イノベーターを育てる
なら、すぐれたコーチングを学ぶべきです。
子どもの将来を考え、親である自分自身が変わる勇気を持つ。そんな覚悟が
問われている時代なのだということを本書は気づかせてくれています。
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